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<『少年』などの作品が収録されています> 芥川龍之介全集(5) [ 芥川龍之介 ](ショップ:楽天ブックス)


■目次
仙人/庭/一夕話/六の宮の姫君/魚河岸/お富の貞操/おぎん/百合/三つの宝/雛/猿蟹合戦/二人小町/おしの/保吉の手帳から/白/子供の病気/お時儀/あばばばば/一塊の土/不思議な島/糸女覚え書/三右衛門の罪/伝吉の敵打ち/金将軍/第四の夫から/或恋愛小説/文章/寒さ/少年/文放古/桃太郎/十円札/大導寺信輔の半生/早春/馬の脚/春


■青空文庫から『少年』を一部抜粋
     一 クリスマス

 昨年のクリスマスの午後、堀川保吉(ほりかわやすきち)は須田町(すだちょう)の角(かど)から新橋行(しんばしゆき)の乗合自働車に乗った。彼の席だけはあったものの、自働車の中は不相変(あいかわらず)身動きさえ出来ぬ満員である。のみならず震災後の東京の道路は自働車を躍(おど)らすことも一通りではない。保吉はきょうもふだんの通り、ポケットに入れてある本を出した。が、鍛冶町(かじちょう)へも来ないうちにとうとう読書だけは断念した。この中でも本を読もうと云うのは奇蹟(きせき)を行うのと同じことである。奇蹟は彼の職業ではない。美しい円光を頂いた昔の西洋の聖者(しょうじゃ)なるものの、――いや、彼の隣りにいるカトリック教の宣教師は目前に奇蹟を行っている。
 宣教師は何ごとも忘れたように小さい横文字の本を読みつづけている。年はもう五十を越しているのであろう、鉄縁(てつぶち)のパンス・ネエをかけた、鶏のように顔の赤い、短い頬鬚(ほおひげ)のある仏蘭西(フランス)人である。保吉は横目を使いながら、ちょっとその本を覗(のぞ)きこんだ、Essai sur les ……あとは何だか判然しない。しかし内容はともかくも、紙の黄ばんだ、活字の細(こま)かい、とうてい新聞を読むようには読めそうもない代物(しろもの)である。


■『少年』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。




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